研究内容の紹介
ここで言う化学物質とは・・
(1)食べ物や水から経口摂取されたもので、植物の色素、環境汚染物質、食品添加物、医薬品・・
(2)体内で生合成された生理活性物質で、生理活性アミン、ステロイドホルモン、甲状腺ホルモン・・
などの低分子の有機化合物を言い、タンパク質などの高分子は含んでいない。
これらの低分子有機化合物は一般的には水に溶けにくい性質を持ち、そのため脂肪などに溶け込んで体内に蓄積されやすい傾向がある。これらの物質が体内に過剰に蓄積すると生体の正常な機能に障害(最近では撹乱などという言葉をよく耳にします)をおよぼすことが多い。
過剰な生理活性物質や体内に侵入した化学物質は、チトクロームP-450による官能基の導入(第一相反応ともいう)と水溶性原子団の抱合(第二相反応ともいう)の二段階の反応を受けて水溶性が高められ、細胞膜に局在する排出ポンプにより細胞外へと輸送される。化学物質に反応する生体防御系は生体の恒常性維持にとって不可欠であり、大きく分けると水酸化、抱合、および排出の三段階からなる複雑な機構である。
UDP-グルクロン酸転移酵素
UDP-グルクロン酸転移酵素 (UGT) は上記の三段階のうちの抱合に関わる酵素の総称で、UDP-グルクロン酸から水溶性原子団であるグルクロン酸を多種類の有機化合物に転移する反応を触媒している。UGTは二つのファミリーに分類されるが、我々はファミリー1 (UGT1) について遺伝子構造と発現調節機構を調べている。
ABCトランスポーター
ABCトランスポーターは上記の三段階のうちの排出を行う輸送体タンパク質の総称で、ATPを加水分解すると放出されるエネルギーを駆動力として、第一相反応と第二相反応で多種類の有機化合物が代謝されて生じたグルクロン酸抱合体やグルタチオン抱合体などを細胞外に排出する。ヒトでは49種類が知られており、AからGまでの七つのファミリーに分類されている。
肝組織の構築
肝臓の細胞膜は類洞と呼ばれる血液に面した側と、微小胆管と呼ばれる肝細胞の隙間に面した側で機能が二極化している。この性質を一般に極性といい、生体の恒常性(ホメオスタシス)の維持にとって肝細胞が極性を正常に維持することがきわめて重要な側面を持つ。