研究内容の紹介


下に示す図は、肝臓の基本単位である肝小葉の組織構築を模式的に表したもので、Bloomらにより1975年に出版された組織学の図版に手を加えたものである。

liver

矢印 (赤):肝門脈と肝動脈から肝臓に流入する血液は、肝小葉内で混ざりあって中心静脈へと向かう。肝臓に入った血液は、肝細胞索に沿って移動する間に栄養分や酸素を肝細胞に供給し、一方で肝細胞内で処理された物質を受け取って中心静脈で合流して全身へと運んでいる。

矢印 (青):列状になって並んだ肝細胞の隙間では、血液から隔離された領域に細胞膜が変形して微小胆管が形成されている。肝細胞からの分泌液(胆汁のもと)は、微小胆管を移動して小葉間胆管へと流入する。小葉間胆管は集合して最終的に総胆管となり、胆のうに入って胆管となる。胆のうに蓄えられた胆汁は十二指腸に分泌される。

肝細胞のもつ極性の重要性について
肝細胞に視点を移してみると肝細胞の細胞膜は、類洞と呼ばれる血液で充たされた空間に面した側と微小胆管と呼ばれる肝細胞の隙間に面した側で、膜を構成するタンパク質の種類や膜の機能が異なっており二極化している。この性質を上皮細胞の極性という。生体の恒常性(ホメオスタシス)の維持にとって肝細胞が極性を正常に維持することがきわめて重要な側面を持つ。

肝細胞は血液から受け取った様々な物質のうち、不要で有害なものを適切に処理して有害性のより低い化合物へと解毒代謝して細胞外に排出している。肝細胞で代謝された化学物質のうちのあるものは胆管に輸送されて糞便とともに体外に排出され、別のものは血流に送り出されて腎臓でこしとられて尿中に排出される。ここで注目すべきは、胆管側へ排出される代謝物と血管側へ排出される代謝物が選別されていることである。例えば、肝細胞で代謝されたステロイドホルモンのあるものは血液に送り返されて腎臓から排出され、ヘモグロビンなどのヘムタンパク質が破壊されて生じたビリルビンや甲状腺ホルモンはグルクロン酸抱合体となり胆管側に排出される。

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