研究内容の紹介
ABCトランスポーターはいわゆる膜タンパク質であり、その発見当初は動物の肝臓や小腸の細胞膜に局在する異物排出ポンプであった。その後多数の分子種が発見されるに至って、それぞれの分子種によって多様な細胞内局在があることが分かり、現在では小胞体膜、細胞膜、ゴルジ体膜、リソソーム膜などの一連の分泌経路を構成する細胞内小器官の膜系だけでなく、ミトコンドリア膜やペルオキシソーム膜を含め、分子種に固有の局在場所があるものと考えられている。
植物細胞の場合は、ABCトランスポーターは細胞膜のほか,液胞,グリオキシソーム,ミトコンドリア,葉緑体の膜に局在化している。ちなみに、シロイヌナズナは約100個のABCトランスポーターの遺伝子をもっており,さまざまな二次代謝産物に加えてオーキシンや重金属などを輸送することが分かっている。
動物の場合でも植物の場合でも、ABCトランスポーターの分子種には各々に特有の機能があり、それらの機能に見合ったオルガネラの膜に局在化している。言い換えれば、各々の分子種がオルガネラの膜に正しく局在することで、それぞれが適切に機能できるようになる。
生合成したタンパク質を適切なオルガネラに局在化させることでタンパク質の機能を支援する仕組みを細胞がもっており、ABCトランスポーターを題材に取り上げてその仕組みを解き明かす研究を行なっている。