研究内容の紹介


ABCトランスポーターはいわゆる膜タンパク質であり、その発見当初は動物の肝臓や小腸の細胞膜に局在する異物排出ポンプであった。その後多数の分子種が発見されるに至って、それぞれの分子種によって多様な細胞内局在があることが分かり、現在では小胞体膜、細胞膜、ゴルジ体膜、リソソーム膜などの一連の分泌経路を構成する細胞内小器官の膜系だけでなく、ミトコンドリア膜やペルオキシソーム膜を含め、分子種に固有の局在場所があるものと考えられている。

localization

植物細胞の場合は、ABCトランスポーターは細胞膜のほか,液胞,グリオキシソーム,ミトコンドリア,葉緑体の膜に局在化している。ちなみに、シロイヌナズナは約100個のABCトランスポーターの遺伝子をもっており,さまざまな二次代謝産物に加えてオーキシンや重金属などを輸送することが分かっている。

動物の場合でも植物の場合でも、ABCトランスポーターの分子種には各々に特有の機能があり、それらの機能に見合ったオルガネラの膜に局在化している。言い換えれば、各々の分子種がオルガネラの膜に正しく局在することで、それぞれが適切に機能できるようになる。

生合成したタンパク質を適切なオルガネラに局在化させることでタンパク質の機能を支援する仕組みを細胞がもっており、ABCトランスポーターを題材に取り上げてその仕組みを解き明かす研究を行なっている。

abcb6

  • ABCトランスポーター

    生体膜を介して物質を出し入れするタンパク質をトランスポーター(輸送体)という。ABCトランスポーターのABCは、ATP-binding cassette(ATP-結合カセット)の頭文字から来ている。ヒトゲノムにおいて、49種の遺伝子が見つかっているが、タンパク質として実際に機能するものは48種類。(※これによってABC48とも言われる・・ウソです。)
  • Walkerモチーフ

    ATP加水分解活性を持つ多くのタンパク質で見出されるコンセンサス配列で、ATPの結合と加水分解に関与する構造を形成する。Walker AモチーフはATPのリン酸基結合部位で、GXXXXGKT/Sがコンセンサスとして見出される。Walker Bモチーフは、Mg2+を介してヌクレオチドに結合し、ΦΦΦΦDE(Φ:疎水性アミノ酸)がコンセンサス配列として見出される。
  • 腸肝循環

    肝臓から胆管に排出されたグルクロン酸抱合体は、腸管を移動する間に腸内細菌がもつβ-グルクロニダーゼの作用で加水分解されて元の化合物(アグリコン)に変わり再び吸収されることがあり、これを腸肝循環という。
  • Signatureモチーフ

    Cモチーフとも呼ばれる、ABCトランスポーターに特徴的な配列。真核生物と原核生物を問わず、一部の例外を除いてLSGGQの配列が保存されている。
  • 局在化シグナル

    細胞の中に存在するタンパク質は、一部の例外を除いて特定の細胞小器官(オルガネラ)に限定的に存在している。これをタンパク質の局在化といい、局在化を決定する情報が書き込まれているアミノ酸配列を局在化シグナルという。標的化シグナルも似たようなニュアンスで用いられるが、新たに合成されたタンパク質が局在場所への輸送途上に仕分けられるための配列という意味合いが強い。
  • 抱合反応

    ある化合物がもつ原子団を、ほかの化合物の官能基に転移する反応。グルタチオン抱合、グルクロン酸抱合、硫酸抱合、アミノ酸抱合などがある。リン酸基や水酸基の転移反応などと区別して、生体異物や生体内物質の官能基に生体成分を結合させる転移反応を指す。多くの場合、抱合反応を受けることによって尿中や胆汁中に排泄されるが、一部では活性化されて毒性の原因となる場合もある。