研究内容の紹介
6回膜貫通の基本構造に加え、ATP-結合カセット(ATP-binding cassetteの頭文字からABC)と呼ばれる高度に保存されたアミノ酸配列をもつ輸送体タンパク質を総称してABCトランスポーター(あるいはABC輸送体)という。ATP-結合カセットの中でも特に保存された配列としてWalker AモチーフとWalker Bモチーフがあり、その間にsignature Cと呼ばれるABCトランスポーターで保存された配列がある。
構造をみると、膜貫通ドメイン(MSD)で生体膜を6回貫通しており、ヌクレオチド結合ドメイン(NBD)にはATP-結合カセットが含まれている。また、ABCトランスポーターの分子種によってMSDとNBDの組み合わせが異なっており、NBD-MSDの6回膜貫通構造を基本単位とするものがハーフタイプトランスポーターであり、MSD1-NBD1-MSD2-NBD2の12回膜貫通構造を基本単位に持つものはフルタイプトランスポーターと分類されている。
ABCトランスポーターの構造が複雑なのは、6回膜貫通構造に加えて5回膜貫通構造を持つものがあり、この5回膜貫通構造の部分をMSD0としている。ABCC1やABCC2などは、MSD0-MSD1-NBD1-MSD2-NBD2の17回膜貫通構造のフルタイプトランスポーターである。また、ABCB6はMSD0-MSD1-NBD1の11回膜貫通構造のハーフタイプトランスポーターである。
さらに複雑なのは、ABCトランスポーターの分子種によってMSDとNBDの順序にバリエーションがあり、アミノ末端からMSD-NBDの順で構成される分子種に加えて、図の右側で示したように、順序が逆になったNBD-MSDを基本単位とする分子種もある。