研究内容の紹介
ラットUGT1遺伝子変異の解析
高ビリルビン血症ラット (Gunnラット、下の写真) の遺伝子構造を解析した結果、共通領域にある第二エクソンにおいて一塩基が欠失していることが分かった。共通領域の異常によってUGT1遺伝子複合体から生成するすべての分子種が同時に欠損することを示し、Crigler- Najjar症候群として知られるヒトの遺伝子病の解明に大きく貢献した 。
Gunnラット肝臓より単離した初代培養肝細胞を使って変異型UGT1A1タンパク質の細胞内動態を解析した。その結果、Gunnラットの変異型UGT1A1は50分の半減期で速やかに分解されていることが分かった。ちなみに正常型UGT1A1の細胞内での半減期はおよそ10時間である。また、カルボキシ末端を大きく欠失する変異タンパク質は合成されてから小胞体膜に挿入されずに内腔に誤って配送され、その後速やかに細胞質側に送り返されてプロテアソームにより分解されることが詳細な解析によって分かった。
【参考文献】Biochim. Biophys. Acta 1407, 173-184 (1998), Arch. Biochem. Biophys. 405, 163-169 (2002)
ヒトUGT1遺伝子変異の解析
下に示す図は、高ビリルビン血症を発病するCrigler-Najjar症候群患者およびGilbert症候群患者で見出された、UGT1遺伝子の異常部位の一部をまとめたものである。Crigler-Najjar症候群では、重篤なType Iと比較的軽症なType IIに分類される。
ヒトの場合もラットと同じくUGT1A1がビリルビンのグルクロン酸抱合に関わる唯一の分子種である。Type Iの例として赤で示すQ357END(357番目のグルタミンが停止コドンに変異したもの)、K407+14(407番目のリジンコドン以降のフレームシフトにより14残基のアミノ酸が付加されて停止する変異)、およびL437END(437番目のロイシンが停止コドンに変異したもの)を取り上げ、またType IIの例として緑で示すL15R(15番目のロイシンコドンの一塩基置換によりリジンのコドンに変異したもの)を取り上げ、これらのUGT1A1変異体をCOS細胞で発現させて細胞内局在、ビリルビンのグルクロン酸抱合活性、および細胞内分解速度を調べた。
Q357END、K407+14、およびL437ENDのカルボキシ末端を大きく欠失する変異タンパク質は、合成されてから小胞体膜に挿入されずに内腔に誤って配送され、その後速やかに細胞質側に送り返されてプロテアソームにより分解されることが分かった。興味深いことに、L15Rは、痕跡程度の活性を保持していたが、この変異体は小胞体膜に弱く結合はするものの膜透過が出来ずに細胞質側にとり残され、およそ40分の半減期でプロテアソームにより分解されていることが分かった。
【参考文献】Biochim. Biophys. Acta 1407, 173-184 (1998), Arch. Biochem. Biophys. 405, 163-169 (2002)