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2020年12月の記事は以下のとおりです。

私の偏愛するSFたち(その4)

その1からその3までの作品はどれも破滅世界モノですので、その4では毛色を変えましょう・・

 

乾緑郎「機巧のイヴ」

読み始めたら止められない、一気読み必至のSF伝奇小説です。

 

舞台は並行世界が設定されており、江戸時代とは違った世界の日本。

江戸を彷彿とさせる天府から幕藩体制を支配する将軍家(幕府)と、女系によって継承される天帝家(朝廷)が対立してます。

 

幕府精煉方手伝という謎の役職の釘宮久蔵(天才機巧師)と、釘宮久蔵の養女の伊武(機巧人形)を中心に展開していく、5つの連作短編集。

これらすべてで毛色が違っていて、ミステリーもあれば人情噺もあり、天府と天帝の対立を描く謀略物もあったりで、まるで宝箱のような物語の詰め合わせです。

 

伊武(のちにはイヴ)は、機巧人形(オートマタ)と呼ばれる超精密なからくり人形で、生身の人間と区別がつきません・・今で言うアンドロイドです。

このほかにも機巧人形が登場し、イヴと天帝の機巧人形が続編でも活躍します。

 

「機巧のイヴー新世界覚醒篇ー」と「機巧のイヴー帝都浪漫篇ー」

2作目の舞台は、1作目からおよそ100年後の明治末から大正にかけての時代のような世界で、まさに和風スチームパンクな世界が炸裂します。

3作目の舞台は大正末期から昭和初期のような世界で、2作目のスチームパンクを踏襲しつつ「ハイカラさんが通る」ような大正ロマンっぽい設定が光ります。

 

2作目、3作目ともにイヴは狂言回しの役目です。

また、関東大震災や甘粕事件に満鉄といった、歴史上の出来事を改変世界に鮮やかに取り込んでます。

最後にイヴが活動を止めてしまうのですが、大事に想う者がいれば魂を再び宿すことが出来ますので、まだまだ先というか他の機巧人形による続編もあるのかなと期待します。

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