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2021年06月の記事は以下のとおりです。

新しい技法で見えてきた小胞体-ゴルジ体間の微細構造

ER-to-Golgi protein delivery through an interwoven, tubular network extending from ER

Aubrey V. Weigel, Chi-Lun Chang, Gleb Shtengel, C. Shan Xu, David P. Hoffman, Melanie Freeman, Nirmala Iyer, Jesse Aaron, Satya Khuon, John Bogovic, Wei Qiu, Harald F. Hess,
and Jennifer Lippincott-Schwartz

Cell 184, 2412–2429 (2021)

 

言わずと知れた大御所、Lippincott-Schwartzの研究チームの論文。

 

ER–Golgi間の輸送に関して、COPIIとCOPIの役割について細胞生物学分野で受け入れられているモデルがあります。

輸送に関与する分子のそれぞれは分かっているのですが、それらがどのように組織化されてカーゴを輸送するのかといった全体像が不明です。

教科書では当たり前のように書かれていることってありますが、それって本当なのとかそこまでしか分かってないのという疑問に答えを出そうというものです。

 

観察手法はcryo-SIMとFIB-SEM、タンパク質を変性させない条件の超低温でサンプルを生のまま固定して超解像で蛍光観察し、その後に電子顕微鏡で微細構造を観察します。電顕観察では収束イオンビーム (FIB)によってサンプルを少しずつ掘削し、得られた掘削面の構造を走査型電子顕微鏡で取得し、連続した3D画像にします。最後に立体化された蛍光観察画像と重ね合わせるという手法です。

 

この手法では生きたままの細胞を観察できませんので、RUSH法によって時間を決めてカーゴを輸送させ、cryo-SIM/FIB-SEMで観察してます。

 

この新しい観察手法を駆使して、分泌経路の初期段階の分子解剖を行って得られた結果を要約すると、

(1) ERESは複雑に絡まった形態のネットワークを形成し、ERとの間でカーゴを交換する。フツーの蛍光観察では小胞体に点在するドット状のシグナルでしか見えないのですが、データの真偽は脇にしておいて思いのほか複雑な形態で感動です。

(2) COPIIによりカーゴがERESに集積し、COPIによってカーゴがERESからGolgiに運搬される。COPIIはカーゴをERESに搬出する初期段階に関わることになります。また、COPIはGolgiからERへの輸送と教わるのですが、この教科書的な記述を改める日が来るのかもしれません。

(3) カーゴの運搬体は数珠玉が連なったような膜の構造で、微小管に沿って移行する。この微細構造も感動ものです。

 

 

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