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ベルリン三部作

(この記事は2018年4月22日に投稿したものを再編・追記しました)

偽りの街/砕かれた夜/ベルリン・レクイエム(著者:フィリップ・カー/訳者:東江 一紀/新潮文庫)

 

「ニューヨーク1954」を読んで、この物語を再読しようと思いました。

ベルリンの私立探偵ベルンハルト・グンターの活躍を描いた三部作。

作者は本来はこの三部作で打ち止めにして、自身の創作活動をジャンル不問で広げるつもりだったようですが、15年ほどしてからグンターシリーズを再開。

再開後の話もアッと驚く意外な展開でグイグイと読ませます・・が、ここでは初期の三部作。

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1作目の「偽りの街」はナチスによる支配と統制が完成したころのお話。

オリンピックに湧くベルリンが舞台。

当時のベルリンは人間が日常茶飯で失踪する街。

ベルリン刑事警察の元刑事で私立探偵の主人公が活躍します。

本作では、とある実業家から行方不明者の捜索を依頼され、あらゆる手を尽くして最後には見つけ出しはしますが、決してハッピーな結末ではありませんでした。

 

2作目の「砕かれた夜」は第二次世界大戦に突入前夜のころ。

社会背景としてユダヤ人迫害が激化する水晶の夜が巧みに織り込まれてます。

凶悪事件の捜査の指揮を求められ、私立探偵からベルリン刑事警察に復帰、しかも警部の地位。

暗い世相が描かれ、結末も決して明るくはなく、主人公は正義感からとは言えある悪事に手を染めてしまいます。

 

3作目の「ベルリン・レクイエム」は終戦直後が舞台で、探偵稼業を再開してます。

妻帯してますが、肝腎の結婚生活は破綻寸前。

逃げるように出向いた仕事先のウイーンで陰謀に巻き込まれます。

東西冷戦とベルリン封鎖、そしてナチ狩りが物語の社会背景として使われてます。

破綻寸前の夫婦関係でしたが、最後の最後に縒りが戻りそうな兆しが・・

少しだけですが、明るくハッピーな未来を予感させる結末でした。

 

2018.02.08の所で紹介した「ニューヨーク1954」にもあるのと同じく、ベルンハルト・グンターもユーモア感覚と度胸、そして正義感を武器にして世の中の悪や不条理に立ち向かいます。

まぁ、コレって、探偵小説とかハードボイルドのジャンルではよくある設定。

ナチス支配下の息苦しい社会状況のドイツに物語の時代背景を設定したところが、作者の目の付けどころ。

危機的な状況のなかでも減らず口を叩き、度胸と運を味方に立ち回り、どういう訳かロマンスの花が咲きます・・が、その花はあえなく散ってしまいます。

そんな主人公の男前度に★★★★☆を進呈です。

 

また、グンターの女性観なのか、「女性には誉めて誉めちぎることが大事で、それは犬がビスケットを何枚でも欲しがるのと同じ」と言い放ってますが、T嶋Y子センセーが激怒しそう・・

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