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疑心渦巻く時代に正義を貫く

(この記事は2018年2月8日に投稿したものを再編・追記しました)

ニューヨーク1954

(著者:デイヴィッド・C・テイラー/訳者:鈴木 恵)

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ニューヨーク市警の刑事キャシディが奇妙な状況の殺人事件に遭遇。

事件の現場となった自宅アパートには、拷問を受けて惨殺されたダンサー、そして部屋には収入とは明らかに不釣り合いな一級品の家具調度。

何か不法なカネが絡んだ事件と見て捜査に取りかかると、速攻でFBIが捜査を妨害。

構わず主人公が独断で捜査を続けるうちに、CIAやKGBの関連も浮上して事件の様相は複雑化。

 

「疑心と恐怖の時代を描く歴史ノワール」とカバーや帯にありますが、キャシディーは犯罪者とは程遠い存在。

その周りの人間が、ギャングの親玉とか悪徳警官であったり、自分だけに都合の良い正義を振りかざすマッカーシー委員会の面々、FBIの大物、CIAとKGBの諜報員が絡んでます。

という訳で、いわゆるノワール(暗黒小説とか犯罪小説)ではありません。

 

また、舞台である1954年のニューヨークは、アメリカの他の都市と同じく赤狩りの嵐が吹き荒れる真っただ中。

その赤狩りの鉾先がキャシディの父親に迫り、また強請屋からの恐喝が妹にも・・

息苦しい社会状況の中、主人公は持ち前のユーモア感覚と、ちょっとばかりの度胸、そして正義感を武器にして世の中の悪や不条理に立ち向かいます。

その颯爽とした格好よさに、★★★★★の男前度を進呈です。

 

まぁ、こういうのは探偵小説とかハードボイルドのジャンルではよくある設定で、その時代背景をいつに持って来るかが著者の腕の見せどころなのだと思います。

マッカーシズムの吹き荒れるニューヨーク、ブロードウェイにナイトクラブ、ビリー・ホリデイやサラ・ボーンといった象徴をちりばめて、その時代を生き生きと描写。

どこに行ってもタバコの煙が漂っているというのもイイです。

物語を読んでいると、主人公につられてタバコを喫いたくなってしまいます。

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