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カテゴリー「本・音楽・映画・娯楽」の検索結果は以下のとおりです。

異色コンビの誕生

チョプラ警部の思いがけない相続

ヴァシーム・カーン、ハーパーBOOKS(舩山むつみ訳)

 

異色の探偵コンビが大都市ムンバイを奔走するシリーズの幕開けです。

チョプラ警部はムンバイ警察ラングワラ署の署長ですが、病気を理由に早期退職することになり、物語は退職の日の朝からスタートします。

 

よりによってそんな日に少年の水死体が上がり、後任の署長はこれを事故と断定して片付けてしまいますが、水死体の様子を不審に思ったチョプラ(元)警部は真相の解明に乗り出し、やがてはインド国内を震撼させる大事件になります。

 

警察を辞めたチョプラ(元)警部の単独捜査は困難と危険に晒されますが、幸いにも心強い相棒に恵まれることになります。

その相棒とは叔父から相続させられた子象で、その子象は身寄りをなくしたことから不安に苛まれてます。

物語が進むにつれてお互いに心を通わせるようになり、チョプラ(元)警部が絶体絶命の危機に陥ったときに、悪いヤツらを跳ね飛ばして効率的に無力化します。

 

この物語でチョプラ(元)警部と子象のコンビが誕生し、新しく探偵事務所を開くことになります。

この子象は相棒ですがあくまでも象で、映画とかでよくある人間じみた行動をする訳ではなく、読んでいてこっ恥ずかしさを覚えるようなことはありません。

ただ、結果的にチョプラ(元)警部の手助けになったり命を救ったりすることがあるのですが、まぁこの辺はボリウッド映画のご都合主義に似た楽しさです。

この巻では現代インドが抱える社会の闇が垣間見えますが、全体としては読みやすいです。

 

ちなみに探偵をバックアップする心強い友人といえば、まずはウィンザー・ホーン・ロックウッド三世でしょうか。

スポーツエージェントのマイロンの親友で通称はウィン。

大富豪の御曹司なのですが精神的にぶっこわれ気味でヤバく、裏世界とも繋がっていて犯罪者たちに恐れられる存在。

 

そして「人間凶器」の異名をとるブッバ・ロゴウスキー。

パトリックとアンジーの探偵コンビを強力にバックアップするのですが、ある巻では重火器をぶっ放したりして大活躍します。

私の偏愛するSFたち(その4)

その1からその3までの作品はどれも破滅世界モノですので、その4では毛色を変えましょう・・

 

乾緑郎「機巧のイヴ」

読み始めたら止められない、一気読み必至のSF伝奇小説です。

 

舞台は並行世界が設定されており、江戸時代とは違った世界の日本。

江戸を彷彿とさせる天府から幕藩体制を支配する将軍家(幕府)と、女系によって継承される天帝家(朝廷)が対立してます。

 

幕府精煉方手伝という謎の役職の釘宮久蔵(天才機巧師)と、釘宮久蔵の養女の伊武(機巧人形)を中心に展開していく、5つの連作短編集。

これらすべてで毛色が違っていて、ミステリーもあれば人情噺もあり、天府と天帝の対立を描く謀略物もあったりで、まるで宝箱のような物語の詰め合わせです。

 

伊武(のちにはイヴ)は、機巧人形(オートマタ)と呼ばれる超精密なからくり人形で、生身の人間と区別がつきません・・今で言うアンドロイドです。

このほかにも機巧人形が登場し、イヴと天帝の機巧人形が続編でも活躍します。

 

「機巧のイヴー新世界覚醒篇ー」と「機巧のイヴー帝都浪漫篇ー」

2作目の舞台は、1作目からおよそ100年後の明治末から大正にかけての時代のような世界で、まさに和風スチームパンクな世界が炸裂します。

3作目の舞台は大正末期から昭和初期のような世界で、2作目のスチームパンクを踏襲しつつ「ハイカラさんが通る」ような大正ロマンっぽい設定が光ります。

 

2作目、3作目ともにイヴは狂言回しの役目です。

また、関東大震災や甘粕事件に満鉄といった、歴史上の出来事を改変世界に鮮やかに取り込んでます。

最後にイヴが活動を止めてしまうのですが、大事に想う者がいれば魂を再び宿すことが出来ますので、まだまだ先というか他の機巧人形による続編もあるのかなと期待します。

私の偏愛するSFたち(その3)

パオロ・バチガルピ「ねじまき少女」

 

石油が枯渇してしまった近未来のタイが舞台。

世界的規模でエネルギー構造が激変した結果、日常の主な動力源を遺伝子改変生物に頼るほか、ゼンマイを巻いて貯めたエネルギーを利用してます。

これらの手段で得たエネルギーから電気も作ってますが、安定供給は出来てません。

また、害毒に冒された危険な食物が人々の命を脅かし、安全で安定的な食物の供給は国際企業に掌握されてます。

 

奇病や遺伝子改変体の蔓延、人工生命、自然発生した奇妙な植物、温度上昇と海面上昇がもたらす不快な気候、人種の弾圧と虐殺など、複雑に絡み合ったキーワードが盛り込まれて物語が進行します。

物語には特定の主人公がいない群像劇の形式ですが、タイトルにある「ねじまき少女」エミコが印象的です。

エミコは日本で生まれた遺伝子操作による人工生命体で、嬲られるという役割をもつセクサロイドとして生を受けてます。

その一方で独立した個としての希求も併せ持ち、彼女の心の中で芽生える2つの相反する間でのせめぎ合いが切ないです。

 

石油文明が崩壊した後の世界での物語がお好きな方でしたら、同じ著者による「第六ポンプ」や「シップブレイカー」もどうでしょうか。

前者は短編集で、化学物質の摂取過剰で出生率の低下と痴呆化が進行しつつあるニューヨークが舞台の表題作や、「ねじまき少女」と似た設定の「カロリーマン」などが印象的です。

私の偏愛するSFたち(その2)

椎名 誠「アドバード」

舞台は近未来、企業間の自由競争のもと広告合戦が加熱し、あらゆるところに広告があふれた社会となります。

もちろん自分の部屋にいても企業やら政府などの無数の広告が押し入ってきます。

広告合戦を制覇すべく遺伝子改変生物を使った広告も現れ、それに対抗してライバル企業の広告を潰す目的で遺伝子改変生物をさらにパワーアップ・・

やがて遺伝子改変生物が暴走して環境を破壊し、行き着く先は人類文明の破滅です。

 

物語はそんな破滅した世界で生き延びている兄弟が、行方不明となった父親を探しに旅に出るところから始まります。

道すがら色んな背景を抱えた人やアンドロイドなどと出会いますが、行き着いた先で分かった事実は・・

 

舞台設定は、ブライアン W.オールディスの「地球の長い午後」みたいな感じですが、こちらは核戦争による環境破壊で長い時間のあとで衰退して矮小化した人類が主役。

地球は植物が優勢となり、人類はその陰でコソコソと動き回るのが精一杯です。

この物語では風変わりな植物が沢山出てきますが、「アドバード」でも負けず劣らず、植物も動物も色んな遺伝子改変生物のオンパレード・・想像力が掻き立てられてしまいます。

私の偏愛するSFたち

まずは、上田 早夕里「華竜の宮」

大規模な地殻変動が引き金となり気候が温暖化して陸地の大半が水没。住み慣れた土地を追われた避難民の受け入れを拒む国家が放った殺戮兵器と他国の対抗兵器が暴走し、人類は絶滅寸前まで追い詰められます。

そんな事態をなんとか平和的に解決して繁栄を取り戻した25世紀、人工都市に住む陸上民の国家連合と遺伝子改変で海に適応した海上民との間で新たな確執が生まれます。遺伝子改変で生み出された獣舟の存在も不穏な動きを見せています。

そんな状況を解消しようと東奔西走する主人公の青澄誠司は、ある海上民の集団の長(オサ)を務めるツキソメと会い、陸上社会と海上社会の諍いを無くそうと働きかけますが、政府官僚同士の諍いと国家連合の思惑が障壁となって立ち塞がります。

物語はそんな葛藤を中心に進みますが、事態は違う方向に進み、せっかくの繁栄を取り戻した人類の存亡に関わることに・・

 

続編の「深紅の碑文」も味わい深いです。

前作のその後、大異変と呼ばれる地球規模の地殻変動が迫ってます。それがいつになるか不確定ななか、資源をめぐる国家の対立や陸上民と海上民の対立が深刻化し、武力衝突が頻発。

同じ滅亡するのであれば、人類がいがみ合ったままよりも笑い合っているほうが救われるはず。そんな信念のもと、一触即発の状況を憂慮した青澄誠司は、自ら救援団体を立ち上げ理事長となり、ここでも東奔西走します。

でもやっぱり、資源の独占を目論む国家連合や、自由を求めて海賊化した一部の海上民集団が障壁となり、最後には・・

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