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カテゴリー「本・音楽・映画・娯楽」の検索結果は以下のとおりです。

火星の人

(この記事は2018年8月7日に投稿したものを再編・追記しました)

火星の人(著者:アンディ・ウィアー/訳者:小野田 和子/早川書房/2014年8月)

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巷では理系の読者に間違いなくウケるとの評もありますが、理系も文系も関係なく文句なしの面白さ。

ちょっとした不幸な事故で、ひとり火星に取り残された主人公マーク・ワトニーのサバイバル。

主人公は生き延びるために色々と知恵を絞り、生き延びるための計画で色々と計算しますが、細かな理屈なんてササッと通り過ぎればいいんです。

 

火星から遠く離れた地球では、アメリカだけではなく各国が主人公の救出に手を尽くしますが、救援が失敗する描写があります。

時間に追われた急ごしらえの計画で十分なテストを省略したのが原因でした。

 

ちなみに、最接近時では地球と火星の距離は、およそ4光分で約7千万Kmほど。

最も離れた位置関係ですと、地球と火星はおよそ13光分で約2億3千万Kmの距離にまで差が広がります。

作中では通信に片道12分かかるという設定でした。

よって、最接近時の3倍の距離で隔てられていることになります。

もしも近い位置に火星があれば時間の余裕もあるはずで、急ごしらえのアイリス探査機を載せたイーグルアイの打ち上げ失敗が起こらなかったのかもしれません。

 

ハイテクを駆使したはずの地球からの救援が失敗するのに対し、主人公がローテクを駆使してお気楽にハイテク装備を改良したり不具合を直したりする対比が面白いです。

また、主人公に悲壮感が全くないのも、物語の読みやすさに貢献。

 

同じ火星サバイバルもので、火星での長距離移動の旅を綴る「火星縦断」(著者:ジェフリー・A・ランディス/訳者:小野田 和子/早川書房/2006年5月)があります。

著者はNASAの技術者とのことで、火星の描写とか装備品や機械の描写が超リアル・・ですが、こっちは登場人物の過去の挿話が読んでて辛いです。

 

また、最近では「火星無期懲役」(著者:S. J. モーデン/訳者:金子浩/ハヤカワ文庫SF/2019年4月)という、サバイバルものがあります。

こちらは、無期懲役で刑務所から生きて娑婆に出られない囚人を、自由と引き換えに火星基地建設に送り出したのですが、行った先で次々と囚人が事故死を遂げ・・というストーリーです。

ベルリン三部作

(この記事は2018年4月22日に投稿したものを再編・追記しました)

偽りの街/砕かれた夜/ベルリン・レクイエム(著者:フィリップ・カー/訳者:東江 一紀/新潮文庫)

 

「ニューヨーク1954」を読んで、この物語を再読しようと思いました。

ベルリンの私立探偵ベルンハルト・グンターの活躍を描いた三部作。

作者は本来はこの三部作で打ち止めにして、自身の創作活動をジャンル不問で広げるつもりだったようですが、15年ほどしてからグンターシリーズを再開。

再開後の話もアッと驚く意外な展開でグイグイと読ませます・・が、ここでは初期の三部作。

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1作目の「偽りの街」はナチスによる支配と統制が完成したころのお話。

オリンピックに湧くベルリンが舞台。

当時のベルリンは人間が日常茶飯で失踪する街。

ベルリン刑事警察の元刑事で私立探偵の主人公が活躍します。

本作では、とある実業家から行方不明者の捜索を依頼され、あらゆる手を尽くして最後には見つけ出しはしますが、決してハッピーな結末ではありませんでした。

 

2作目の「砕かれた夜」は第二次世界大戦に突入前夜のころ。

社会背景としてユダヤ人迫害が激化する水晶の夜が巧みに織り込まれてます。

凶悪事件の捜査の指揮を求められ、私立探偵からベルリン刑事警察に復帰、しかも警部の地位。

暗い世相が描かれ、結末も決して明るくはなく、主人公は正義感からとは言えある悪事に手を染めてしまいます。

 

3作目の「ベルリン・レクイエム」は終戦直後が舞台で、探偵稼業を再開してます。

妻帯してますが、肝腎の結婚生活は破綻寸前。

逃げるように出向いた仕事先のウイーンで陰謀に巻き込まれます。

東西冷戦とベルリン封鎖、そしてナチ狩りが物語の社会背景として使われてます。

破綻寸前の夫婦関係でしたが、最後の最後に縒りが戻りそうな兆しが・・

少しだけですが、明るくハッピーな未来を予感させる結末でした。

 

2018.02.08の所で紹介した「ニューヨーク1954」にもあるのと同じく、ベルンハルト・グンターもユーモア感覚と度胸、そして正義感を武器にして世の中の悪や不条理に立ち向かいます。

まぁ、コレって、探偵小説とかハードボイルドのジャンルではよくある設定。

ナチス支配下の息苦しい社会状況のドイツに物語の時代背景を設定したところが、作者の目の付けどころ。

危機的な状況のなかでも減らず口を叩き、度胸と運を味方に立ち回り、どういう訳かロマンスの花が咲きます・・が、その花はあえなく散ってしまいます。

そんな主人公の男前度に★★★★☆を進呈です。

 

また、グンターの女性観なのか、「女性には誉めて誉めちぎることが大事で、それは犬がビスケットを何枚でも欲しがるのと同じ」と言い放ってますが、T嶋Y子センセーが激怒しそう・・

疑心渦巻く時代に正義を貫く

(この記事は2018年2月8日に投稿したものを再編・追記しました)

ニューヨーク1954

(著者:デイヴィッド・C・テイラー/訳者:鈴木 恵)

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ニューヨーク市警の刑事キャシディが奇妙な状況の殺人事件に遭遇。

事件の現場となった自宅アパートには、拷問を受けて惨殺されたダンサー、そして部屋には収入とは明らかに不釣り合いな一級品の家具調度。

何か不法なカネが絡んだ事件と見て捜査に取りかかると、速攻でFBIが捜査を妨害。

構わず主人公が独断で捜査を続けるうちに、CIAやKGBの関連も浮上して事件の様相は複雑化。

 

「疑心と恐怖の時代を描く歴史ノワール」とカバーや帯にありますが、キャシディーは犯罪者とは程遠い存在。

その周りの人間が、ギャングの親玉とか悪徳警官であったり、自分だけに都合の良い正義を振りかざすマッカーシー委員会の面々、FBIの大物、CIAとKGBの諜報員が絡んでます。

という訳で、いわゆるノワール(暗黒小説とか犯罪小説)ではありません。

 

また、舞台である1954年のニューヨークは、アメリカの他の都市と同じく赤狩りの嵐が吹き荒れる真っただ中。

その赤狩りの鉾先がキャシディの父親に迫り、また強請屋からの恐喝が妹にも・・

息苦しい社会状況の中、主人公は持ち前のユーモア感覚と、ちょっとばかりの度胸、そして正義感を武器にして世の中の悪や不条理に立ち向かいます。

その颯爽とした格好よさに、★★★★★の男前度を進呈です。

 

まぁ、こういうのは探偵小説とかハードボイルドのジャンルではよくある設定で、その時代背景をいつに持って来るかが著者の腕の見せどころなのだと思います。

マッカーシズムの吹き荒れるニューヨーク、ブロードウェイにナイトクラブ、ビリー・ホリデイやサラ・ボーンといった象徴をちりばめて、その時代を生き生きと描写。

どこに行ってもタバコの煙が漂っているというのもイイです。

物語を読んでいると、主人公につられてタバコを喫いたくなってしまいます。

Return To Forever

久しぶりに最初から最後まで通しでこのアルバムを聴く機会がありました。

(断片的に聴くのはよくあるのですが・・)

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まず始めに申しておきますと、このアルバムには賛否両論があります。

というか、Jazzは4ビートに限るなどと言う人とかFusion大好き人間とかによって、JazzでもなくFusionでもなく宙ぶらりんのエレクトリックJazzなどとレッテルが貼られたりしてます。

そう言えば、Fusion派の中でも、Weather ReportかReturn To Foreverかで不毛な議論があったような・・

私は4ビートとかに拘らないですから、コレは純粋にJazzの傑作アルバムの一つだと思い、この場で紹介する次第であります。

 

1曲目はかなり長丁場の曲で、ココを乗り切れるかどうかで評価が分かれるのではないかと思います。

導入部とか間奏のソロパートが退屈と言えば退屈かも・・

その後は2曲目の澄んだ印象、3曲目の人生が素晴らしく思えてしまう(?)軽快さ、そしてフィナーレへとなだれ込んで行きます。

 

私の個人的な見解かもしれませんが、このアルバムは人の一生を暗示する内容のように思えます。

受胎から誕生に始まり、幼少期から血気盛んな時期を経て、大切な人と出会い次世代を育み、最後に大団円を迎える・・というストーリーになっていると受け止めてます。

フィナーレは2部に分かれてますが、特に後半はきらびやかで印象的です。

なかでもスタンリー・クラークのベースが神がかってます。

 

Return To Foreverはその後、メンバーがあれこれ激しく入れ替わってバリバリのFusionへと変貌します。

その途上の作品ですと、My Spanish HeartとMad Hutterが私好み。

初期RTFの雰囲気がお好きであれば、Light as A FeatherやFriendsもおすすめです。

少し毛色が変わりますが、Children's Forever(スタンリー・クラーク)やCaptain Marvel(スタン・ゲッツ)でも、初期RTFの雰囲気が味わえます。

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